「膝関節の痛み」について②

 

みなさんこんにちは。旭接骨院 竹内です。

2020年もあっという間に12月になってしまいましたね。今年1年は新型コロナウイルスの影響で出かけることができず、”我慢”の1年だったように感じます。皆さんは2020年はどんな1年だったでしょうか?

 

 

さて今回は前回の続きで、膝関節の痛みについて書いていこうと思います。

 

②膝前面の痛み

・前十字靭帯損傷(ACL損傷)

前十字靭帯は、膝関節前方不安定性に対する一次抑制因子であり、脛骨(すねの骨)の前方移動に対しての抑制力の80%以上を占める膝関節の安定に大切な靭帯です。

スポーツ外傷の中でも頻度は高く、発生機序は内側側副靭帯に類似します。衝突による接触型損傷と、バスケットボールなどに多いストップ・方向転換・ジャンプの着地など急な減速が起こった際に発生する非接触型損傷で起こることが多く、予防が大切です。

 

内側側副靭帯損傷で説明した通り、①前十字靭帯損傷と②内側側副靭帯損傷と③内側半月板損傷が同時に起こりやすく、「不幸の3徴候(アンハッピー・トライアド)」と言われます。

 

 

・オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter病)

オスグッド・シュラッター病は、脛骨(すねの骨)の上端にある骨の隆起である脛骨粗面(けいこつそめん)に強い圧痛と炎症所見が見られます。成長期における骨の癒合(骨化)が完全に終了してない時期に、膝に過度な運動やストレスがかかることで脛骨粗面部の裂離損傷が起こることが主な原因とされています。

 

発症年齢は13歳ごろ(apophyseal stage=11~14歳)がピークといわれています。この時期はスポーツや部活などで運動量が増え、急激な筋肉や骨の成長が起こります。そのため、筋肉と骨のバランスが不安定になりやすく、骨自体はまだ軟骨癒合しかしていないにも関わらず大腿四頭筋などの収縮に伴う繰り返しの張力によって力学的ストレスがかかって発生します。

 

症状としては、脛骨粗面の骨性の膨隆・運動痛・圧痛などがあり、症状に即した運動の制限や休止・運動後のアイシングが大切です。

また、オスグッド・シュラッター病の患者様に共通することとして、「大腿四頭筋を始めとする太ももの筋肉がかたい」ということが挙げられます。そのため、日常的な大腿四頭筋のストレッチングがとても大切になります。

 

除痛にはテーピングや、膝蓋靱帯の中央部を圧迫する「シュラッテル・バンド」が有効なことが多いです。

 

 

・膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)

膝蓋靱帯炎は膝蓋腱炎・ジャンパー膝とも呼ばれ、その名の通りジャンプを繰り返すスポーツをする方に多い損傷です。太ももの前側にある大腿四頭筋は、膝蓋骨上端付近で腱に代わりそこからさらに線維を伸ばして膝蓋靱帯となり脛骨粗面に付着します。大腿四頭筋をはじめとする膝伸展機構(大腿四頭筋-大腿四頭筋腱-膝蓋骨-膝蓋靱帯-脛骨粗面)への繰り返しのストレスによる靱帯の微細断裂が繰り返されることで痛みが生じると言われています。

好発部位は、膝蓋骨下端・脛骨粗面膝蓋腱接合部・膝蓋骨上端の大腿四頭筋腱付着部(簡単に言うと、膝のお皿の上端~脛骨粗面)に起こりやすく、運動時の膝蓋腱の圧痛・うつ伏せでの尻上がりテストが陽性となることが多いです。

 

膝蓋靭帯炎では4つの相に分類することができます。(Roels分類)

状態 対処法
第1相 運動後や活動後のみ痛みがあり、日常生活への影響は少ない。 練習前のウォーミングアップと練習後のアイシングを徹底する。
第2相 活動前後に痛みがあるが、運動中は消失する。 運動量や負荷強度の制限をするとともにテーピングや装具で膝蓋靭帯を圧迫する。
第3相 常に痛みがあり日常生活に支障をきたす。 運動禁止。
第4相 膝蓋骨靭帯の断裂。 手術

 

鍼灸治療では、膝蓋靱帯炎を直接治療するのではなく、原因とされる大腿四頭筋の緊張を緩和させることを目的とします。(炎症部に鍼灸治療を行うと炎症が悪化することがあるため)

なお、膝蓋靱帯の痛みが強く出現している場合はアイシングなどの併用も大切です。

 

 

・膝蓋骨骨折

膝蓋骨は膝関節の前方に位置し、膝の曲げ伸ばしの動きを効率よく行うための中心部分となっています。転倒して膝を強くぶつけたり、重たいものが膝の上に落ちるなどの原因で受傷することが多いです。

膝蓋骨骨折が起こると、2つあるいはそれ以上の骨に分かれ、軟部組織損傷(大腿四頭筋など)が少なく骨の転位が少ない場合と、大腿四頭筋の筋力が関与して骨片が上方に転位する場合があります。後者の場合は自分の意志では膝が動かなくなったり、強く腫れて押さえると非常に強い痛みを感じるようになります。場合によっては膝蓋骨中央付近でくぼみを触れ、骨折がわかる場合もあります。

 

転位が少なく、骨のかけら同士があまり引き裂かれていない場合は保存療法(手術を行わずギプスを巻いたり装具をつけて固定をする)、大腿四頭筋などの作用で骨片が引き裂かれている場合は外科的療法(手術)が行われることがあります。

 

膝蓋骨骨折をしたと思われる場合には、応急処置として膝をまっすぐにして、傘や長い棒など添え木を用いて膝をまっすぐに維持できるように努めてください。

 

 

・有痛性分裂膝蓋骨

膝蓋骨は大腿四頭筋の種子骨(手・足・膝などに見られる丸い骨で腱内に存在し、腱に対しての滑車の役割を持ち、力の伝達や方向を変える役割を持つ)として発生するが、その成長過程において分裂線に異常なストレスが加わることや、成長過程での癒合不全などで痛みが生じると考えられています。成長期(10~17歳)の男性に多いのが特徴で、運動中や運動後に痛くなったり転倒などで膝を強打した際に痛みが出る場合もあります。

 

分裂のタイプは数種類ありますが、一般的には膝蓋骨の外側上方に分裂を認める(Ⅲ型)が多いと言われています。

 

大腿四頭筋などのストレッチ、膝周囲の筋力トレーニング、練習前のウォーミングアップ、練習後のアイシング、練習量を減らして安静にするなどの対応が大切です。

 

 

・反復性膝蓋骨脱臼

膝蓋骨が反復性に外側に脱臼することを言い、原因としては膝蓋骨内側面の形成不全・膝蓋骨高位・全身性関節弛緩・内側膝蓋靭帯の断裂や形成不全を見る場合が多い。

 

思春期~青年期の女性に発生することが多く、運動時に膝が内側に入った状態で大腿四頭筋(もも前の筋肉)が急激に収縮することで発生することが多いようです。

 

膝の痛みに加え、膝崩れ現象や膝前面の不安定感を症状とし、膝蓋骨が外側へ異常可動性(通常とは異なる動きをする)を有し、apprehension sign(アプリヘンションサイン=膝蓋骨を外側に圧迫すると脱臼するような不安定感がある)が陽性となります。

 

治療には大腿四頭筋(特に内側広筋)の強化と膝蓋骨の外側への脱臼予防を目的としたテーピング・サポーターが有用です。

 

・膝蓋下脂肪体炎(Hoffa病)

膝蓋下脂肪体は膝蓋靭帯の裏側に存在する脂肪組織で、大腿神経・閉鎖神経・坐骨神経など豊富な神経支配を受けています。また、自由神経終末と呼ばれる疼痛受容器(痛み・温かさ・冷たさ・触られる・圧迫されるを感じ取るセンサー)が豊富に存在するため、膝蓋下脂肪体に炎症が生じると痛みを感じ取りやすいという特徴があります。

 

また、膝蓋下脂肪体は、膝関節の運動によって形態を変えるという特徴があり、膝関節の屈曲角度(曲げていく)が増加するにしたがって膝蓋下脂肪体の内圧も上昇します。そのため、歩き過ぎやスポーツなどの過負荷、体重の増加、打撲などの外傷、反張膝(膝が後ろ側に反っている)など膝関節に繰り返しのストレスが加わると関節運動に伴う膝蓋下脂肪体の形態変化がスムーズに行われなくなり、内圧の上昇が痛みの発生に関与すると考えられています。

 

 

当院では足圧測定やカスタムインソールの作成を行っております。膝の痛みは足元から改善していくことが大切です。

お身体のことでお困りのことがありましたら当院にご連絡ください。